Yahoo!おしゃべりって位置があったんだよ

Yahoo!おしゃべりって位置があったんだよ。

昔さ、Yahoo!おしゃべりって箇所があったんだよ。



お前は知らないかもしれないがな。

その頃はみんなホームページってやつを持っててな、誰が読むんだかしらねえ自己紹介とか何番目の訪問者です!ってのやっててな、ひどいとこになると熊のアイコンみたいなのがビュンビュンとカーソルを追いかけてくんだ。

ありゃおそれだったね。

誰が関心あるんだかしらねえ、使用PCのスペック記述するヤツまでいてな、「CPU:PentiumII、350MHz」とかドヤ顔で書いてたんだよ。

タワー型のPCの写真まで載せてな。

なんのため?しらねえよ、本人に聞け。

でな、そうしたところには絶対掲示板ってやつがあってな。

BBSとか言ってたな。

山陰放送じゃねえぞ。

で、キリバン踏んだらBBSに報告する事が義務付けられてて、しなかったら末代まで祟られて呪詛にかけられるんだけど、熱心なヤツになると会話っていう、リアルタイムに文字でお喋り可能なやつまで据え付けしてたんだ。

BBSも会話もCGIっていう技術使っててな、パーミッションの設定だかなんだかしらねえけど据え付けするのは結構難しかったんだよ。

掲示板もおしゃべりも自前のやつ据え付けしてるヤツはけっこう可能なヤツ、そう見られてたんだ。

でもな、誰がPCのスペックとか見に来るよ。

誰がタダシのFM-Vの写真みにくるよ。

誰もこねえよ。

熊のアイコン追いかけてくるしな。

だからこれらのBBSや会話は軒並み廃墟になってたんだ。

会話なんて「森ぞーが入室しました」「森ぞーが退室しました」が何行も表示されてるだけよ。

寂しさの象徴、それでしかなかったね。

だけどな、天下のYahoo!様が会話を据え付けしたとなれば話は別よ。

集客力抜群。

たくさんなカテゴリーのおしゃべりルームが据え付けされ、そりゃあ賑わっていたいたもんよ。

全然覚えてないけど「エンターテイメント」とか「地域」みたいなカテゴリがあって、その中でユーザーが個室を立てられるようになってたんだ。

みんなこぞって趣味が合うやつとおしゃべりしたもんさ。

少しばかり直ちにには見つからないんだけど、「出会い」って分類の中に「アダルト」ってカテゴリーがあってな、事実上、そこが18禁のエロカテゴリーとして使われてたんだよ。

信じられねえだろ、Yahoo!公式エロよ。

そんな訳でたくさんと、人間の煩悩をJavaアプレットにしたみたいなエロい個室が数多く立てられててな、その頃の俺は狂ったように通ったもんよ。

その中でも、最高すごかったのが「オナニー個室」ってやつで、そこにはオナニーやりたい女が集まってくるってテーマがあったんだ。

そう、おしゃべりでオナニーだ。

でもな、文字で「んっんっ」とか「いくー」とか「ゆーか!ゆーかちゃん!」とか記述するわけじゃねーぞ。

その頃としては最先端のボイスおしゃべり性能、これがYahoo!おしゃべりには内蔵されていたんだ。

これはすげーぞ、声で女のオナニーが聞けるってえ代物だ。

興奮度がマックスになってしまうのは当然だがな、別の側面としての長所もあったんだ。

それが「実際オナニーしているのは必ずに女である」という点だ。

こりゃあすごかったね、ブレイクスルーだったね。

その頃は現在みたいに誰もがオンラインしてるご時世じゃねえんだ。

みんな参考にのシャツ着てバンダナ巻いてテレホタイムよ。

女が圧倒的に少なかった。

文字だけのオナニー個室なんてやろうものなら1000%の確率で、女のふりしたオッサンがあんあん文字打ってるだけよ。

ネカマっていうんだけどな。

男のオナニー文字を男が見て興奮する、そのような殺伐としたご時世よ。

でも声ならごまかしきかねえんだ。

必ずに女である、そういうバックアップがあった。

年金より確実なバックアップがそこにはあった。

おりゃあインターネットやっててよかったと思ったよ。

Yahoo会話ばんざーいとも言いたくなるよ。

でもな、やっぱ女は少ねえんだよ。

その必ず数が少ないし、Yahooおしゃべりに流れ着いてアダルトに行ってオナニー個室に辿りつく。

こりゃあ天文学的確率よ。

そしてマイクを所持していて、みんなにオナニー聴かれてもいい、なんてなるとほぼ無理に近い確率だってわかるだろ。

でもな、そこそこいたんだよ。

そりゃ入れ食いとまではいかねえよ。

でも、ジッと待ってると現実に来たんだ。

女が来たんだ。

オナニー個室はスピード、時期しかもチームワークが肝心だ。

これらがパーフェクトにマッチしないと女のオナニーにはありつけねえ。

生きるか死ぬかの勝負がそこにはあった。

オナニー個室に入ると10人ぐらいのサムライがいるわけよ。

そっくり男だ。

そんな訳で女が到来してくるのを待つわけだ。

気配を殺してジッと待つ。

追い込み漁みたいな感覚だ。

そこにトークはねえ。

肉食獣みてえに研ぎ澄まされた連中だ。

「mina」とか「kana」とか明らかに女くせえアカウント名が入室してきたら勝負開始よ。

釣りで言うところの魚が餌をツンツンしてるところだ。

まだひいちゃいけねえ、焦っちゃいけねえ。

がっついてサムライどもが襲い掛かったら女は逃げちゃうからな。

ここで俺たちは黙って見守っているんだ。

何をって?オナニー指導員の誘導を見守ってんだよ。

女が個室に入ってきて、いきなりマイク繋いであんあん言い出してみろ、結構そのような女、嫌だぜ。

そりゃあ女だってオナニー個室に来るくらいだ、オナニーする気満々よ、聴いてくれんだよ。

でもいきなりやられたら双方に興醒めよ。

そこにはきちんと予定強調ってやつがあんだ。

そんな訳で優しくオナニーするオナニー指導員の登場だ。

こいつはマイクを所持してて、優しい声してんだ。

男前な声してんだ。

「いらっしゃい、ミナ、今日の気分は如何にかな?」たとえて言えばベイFMのDJよ。

俺が女ならイチコロだね。

「マイク持ってる?」「え、あるんだ、繋いでみる?お話しようよ」「カワイイ声だ」オナニー指導員はこんな感じで誘導していくわけよ。

ここで初めて俺たちガヤの出番だ。

会話画面に「カワイイ声」「可憐な声」「澄みきった清流のような声だね」心にもない事を書きまくっておだてる。

そうこうしてくると、どんどん男どもが入室してくる。

オナニーの気配を感じ取ると、すごい勢いで入ってくる。

スピード勝負って書いたのはこれで、本当はYahoo!会話は一つの個室の定員が100名だ。

オナニーが始まりそうになるともうにこの定員は歴戦の猛者どもで満たされる。

そうすると自動的に「オナニー個室_2」みたいな個室が成形されて、以後の入室者はそこに飛ばされるようになる。

でも、そこにはオナニーやりたい女もオナニー指導員もいねえんだ。

オナニー聴きたい猛り狂った男が100名いるだけだ。

こんな悲しい会話ルームはインターネットの成り立ちの中でそうそうないぜ。

話を戻すと、オナニー個室では選ばれし98名が指導員と女のトークを聴いている。

ここで俺たちはジッとまってねえといけねえ、一切指導員に任せるんだ。

俺たちは指導員に全幅の信用寄せている。

神話的指導員「シャドウウィザード265」さんを信用しきってる。

「じゃあ若干触ってみようか」「はい」こうしてオナニーが始まる。

俺たちが目指していたロケーション、約束の地だ。

オナニーが始まったら指導員の声は障害だから無視ボタンを押す。

いらん。

女の声だけを聞く。

こうして女のオナニーにありつけるってわけだ。

女は聴いて欲しかったオナニーを聴いてもらえる。

指導員も俺が誘導してオナニーさせたと自尊心を得心させる。

俺たちも興奮する。

誰も敗者がいない体系だった。

強いて言うならば「オナニー個室_2」に押し込められた屈強な100人の男たちが敗者か。

そのようなある日、いつものようにオナニー個室で待機していると、女がやってきた。

「ラビアンローズ」とかそのような名前だったと思う。

わりと高貴そうな名前だ。

その日はブラッディレイン0721さんがオナニー指導員だった。

甘い声と穏やかな口調、けれどもひとたびオナニーが始まると女に反対に「脱がなきゃダメじゃないか、ふざけてるのか」と厳格な一面も見せる流行のあるオナニー指導員だった。

いつもの流れで挨拶をし、マイクを接続させる。

するとラビアンローズの声に俺らサムライは驚いた。

こんな品があって可憐で高貴な声があるだろうか、そのようなレベルだった。

声から良い香りがしてきそうな勢いだった。

手に汗握った。

別なものも握った。

こんな高貴な女が現在からオナニーをする。

小学校の時に高校生の兄貴がいるクラスのエロ博士が兄貴のエロ本を盗んできた時くらいの緊張が俺を襲った。

それは指導員のブラッディレイン0721さんも同じようだった。

誘導にいつものキレがない。

上玉の登場に緊張しているのだろう。

その一方でそこはブラッディレイン0721さん、数多くの修羅場(オナニー誘導)をくぐってきただけあって、静かに上玉をオナニーに誘導していく。

おしゃべり定員は事前にパンパンだ。

「オナニー個室_5」くらいまで作られたのを見定めした。

そのような中、実際に精鋭だけがこの個室にいて上玉を見守っている。

「今日は何故ここにきたのかな?エッチな気分?」ブラッディレインが勝負を仕掛ける。

「少々、こういってはなんですが、その、わずか、エッチな気分になりまして、恥ずかしながら、きて、しまいました」その場にいたみんながパンパンに空気入れすぎたタイヤみたいになっていたはずだ。

今日が僕らのYahoo!おしゃべり記念日だ。

こんな上玉に出会える日なんてもう来ないだろう。

心臓が破裂しそうだった。

Yahooチャットバンザーイ!「じゃあ若干だけ触ってみようか」ナンバーワンの勝負どころだ。

俺的にはまだ早いんじゃないかと思ったが、ブラッディレインは一度にぶっこんできた。

彼も勝負を焦ったのだろう。

この「触ってみようか」の瞬間を間違うと一通りは水泡に帰す。

早すぎては逃げられる、遅すぎても、女のテンションが下がる。

お薦め容易にはいかない決断だ。

誰も彼を責める事はできない。

沈黙の時が流れる。

誰もが女の返答を持った。

ブラッディレインも喋らない。

女も喋らない。

会話も動かない。

時のコンセプトが覆りそうなほど、何も動かない時が過ぎた。

張り詰めた緊迫感をこの場にいる全部の人間が共有していた。

静止した時の中で俺は耐えられなくなっていた。

この緊迫感、緊張感、沈黙、頭がおかしくなりそうだった。

何かおしゃべりに書き込んでブラッディレインを援護したほうがいいのか、それとも静観していたほうがいいのか。

俺たちのルールではこの瞬間は余分な事は書き込まない事になっていた。

でもそうは言ってられない。

何が正義で何が悪なのか分からなくなっていた。

何をトチ狂ったのか、気がつくと「Ctrl」と「v」を押し、エンターキーを押していた。

まだ自らの想いも決まっていないのに、何かしなきゃと気ばかり焦り、コピーしていた文字列をおしゃべりに投下していた。

ええい、ままよ!投下してしまったものは仕方がない。

問題はその中身だ。

確か、俺の記憶が確かならばいつもの定型文、「ああ、カワイイ声だなあ。

地方を思い出すような心配無用感のある声」っていう解釈不明なやつがコピーされていたはず、それを貼り付けた。

それなら沈黙を破ってまで投下する長所はないとは言え、援護書き込みになる。

問題なしだ、きっと安心だ。

祈るような心境でおしゃべり画面を見る。

頼む、援護書き込みがコピーされていてくれ!頼む!恐る恐る自身の発言に視線を移した。

画面には衝撃的文字列が並んでいた。

「カマキリ」なんで俺はこんなもんコピーしてんだ。

いつだ、いつだよ。

いつコピーした。

それよりなにより、これ四文字じゃねえか、コピーしてんじゃねえよ。

打ち込めよ。

勝負所の静寂の中、耐え切れないほどの緊張感の中、おしゃべり画面に燦然と輝くカマキリの文字。

先程とは別の解釈で全部の時が止まった。

沈黙を破ったのは女だった。

「カマキリってなんですか?私がカマキリみたいな声って事ですか?失礼な人ですね。

心の内悪い」その声からは深い怒りが感じ取れた。

カマキリみたいだった。

「ラビアンローズさんは退室しました」無慈悲な仕組みメッセージがわずか薄いグレーの文字で表示される。

オナニー寸前だった高貴な女が怒って帰ってしまった事を指し示していた。

これに怒ったのはブラッディレインと97名のガヤたちだ。

「死ね」「お前マジで殺すぞ」「ここまで頑張ったブラッディレインに謝れ」「代わりにお前がオナニーしろよ!いやするな!想い悪いわ!やっぱしね!」俺は現在までの生涯でここまで叩かれまくった事は4回くらいしかない。

とにもかくにも半泣きになりながら謝りまくった。

「なんでカマキリとか書き込んでんだよ!」キレてるブラッディレインの問いに何故か知らないけど「すいません、PCのスペックが低くて誤作動しました。

変な文字がペーストされました。

本当は援護するつもりだったんです」とニュアンス不明な嘘の供述をしてPCのせいにしてた。

「はあ、スペックが低くて誤作動?あるわけねーだろ、スペック書いてみろ」「CPUはPentiumIIの350MHzです」「じゅうぶんじゃねーか、俺なんかPentium133だぞ」こんな心温まる受け応えがあったんだ。

これからはみんなオナニーの事忘れてPCのスペック申告大会よ。

みんなスペックを書きたがったんだ。

かくの如きご時世だった。

いいご時世だった。

現在より少々昔の、全部が煌めいていたご時世のお話さ。

お前が現在インターネットの何に夢中になってるのかしらねえ。

でも、数年後にこうやってメモリー話に可能なといいな。

そうなるように祈ってるよ。



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